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第11回 第91回全国高等学校野球選手権大会 ・上 ~ チーム編 ~2009年09月05日
円陣を組む中京大中京ナイン
決勝戦が荒れると、雑誌が売れない、という話を聞いた。
大会のそれまでの盛り上がりが、どれだけのものであっても、決勝戦に面白みが欠けてしまうと、読者は「今大会は面白くなかった」と思いこんでしまうそうだ。
今大会の決勝戦の途中、実は、ヤバイんじゃないかと危惧していた。一時は10-4と中京大中京が大きくリード。せっかく、ここまでの大会が接戦で盛り上げたのに、そう思われるのは癪に触るなぁ、そんなことを思ったほどだった。
しかし、決勝戦。日本文理は粘るや粘る。9回、一気に5点を取って、中京大中京楽勝のムードから一点、大熱戦を展開したのだ。「佐賀北の奇跡」とまではいかないが、それに近いムードに甲子園はなった。
結局、試合はそのまま、10-9で中京大中京の勝利で、43年ぶりの栄冠となったが、
第91回大会は、実に面白い大会だった!
優勝した中京大中京の総合力は圧巻だった。1番・山中から始まる打線は、破壊力があった。1、2番にそれほどの出塁率があったわけではないが、3番・河合完治がいう。「山中のフルスイングで後が楽になる。無駄な打席なんて一つもない」。簡単には終わらない、1,2番の存在感で、クリーンアップ以降の打棒が際立った。河合、4番の堂林だけでなく、磯村、伊藤、金山…、数え上げたらきりがないほど、打線に切れ目がなかった。
守備に関しても、抜けていた。決勝戦に関しても、守備の違いで勝った試合がいくつかあったし、大藤監督も「打っていますけど、準決勝では3つの併殺を取れている。よく守れていると思う」と口にしていたほどだ。
総合力で果たした中京大中京43年ぶりの王座奪還。見事だった。
甲子園球場
準優勝を果たした日本文理は、あれよあれよという間に決勝進出。準決勝までの対戦相手が初出場校という運はあったにせよ、圧巻だったのは、その攻撃力は中京大中京にも劣ってはいなかった。彼らは昨秋の神宮大会、この春の選抜と初戦敗退。全国大会だけをみたら、対して印象に残っていない。しかし、そこに彼らの忸怩があったように思う。
それに加えて、エース・伊藤。僕は大会中、どうしても、彼のスライダーが気になった。というのも、日本文理が甲子園に出てくると、いつもスライダーがいい投手が出てくるからだ。なにか、ヒントがあるのかなと思ったが、選手たちに聞いてみると、大した答えは返ってこなかった。あったのは、「ボールに慣れたことですかねぇ」ということくらい。ある選手は言う。
「勉強もする選手が多いんで、指先が敏感なのかもしれません。あと、伊藤は、寮とか部屋でもずっと、ボールを触っているので、それがいいんだと思います。ボールに慣れたんじゃないでしょうか」
とにかく、2回の全国大会の屈辱で破壊力を得た打撃と伝統のスライダー。日本文理の準優勝の秘密はそこにあった。
センバツ準優勝の花巻東がベスト4に進出。90年ぶりの快挙だというから、彼らの果たした功績は大きい。個人的には、大会を前にした花巻東ナインには重たいものを感じた。大注目のエース・菊池雄星を中心に、マスコミの注目にさらされてきたのだろうなぁ。それに疲れているような印象さえ持った。異様なまでのプレッシャーが彼らを締め付け、受けに立った。
しかし、初戦の対戦相手が長崎日大とあって空気は変わったようだ。なぜなら、長崎日大はセンバツ優勝の清峰を破った猛者。抽選会の後に、佐々木監督は「チャレンジャーで臨める」といったが、その時の輝いた目といったら、水を得た魚のようだった。
そして、その試合に勝利したナインの表情からは、体の疲れを感じさせなかったし、センバツに見た時のような、さわやかな印象が彼らには見てとれた。全力疾走とカバーリングで、最後は満身創痍の戦いとなったが、美しく散った。
同じく準決勝敗退の県岐阜商も投打に力強かった。3回戦でPL学園、準々決勝で帝京 といった、強豪校を力でねじ伏せた戦いぶりは見事だった。ここまで強いとは誰が予想したか。打線の破壊力と、エース山田の粘り強いピッチング。この4月に就任したばかりの藤田監督の采配も冴えわたっていた。
このほかでは都城商も印象に残った。エース・新西の安定した投球と、地区大会無失策の守備は、とても県立高とは思えなかった。3回戦では強豪・智弁和歌山を、力で寄せ付けなかった。
今大会といえば、インフルエンザも大会の注目として挙げられた。立正大湘南、2回戦で敗退した天理などは、不運としか言いようがない。噂によると、心ない高校野球ファンから「出場するな」などの苦情もあったというから、想像以上の苦労が彼らにはあっただろう。
3回戦で敗退したが、日本航空石川の野球も面白かった。序盤は弱いチームが、中盤から強くなっていく。終盤に粘り強いチームというのは見たことあるが、前半と後半でチームが見違えるというのはなかなか見たことがない。見ていて、楽しいチームだった。
智弁和歌山はことし、守備のチームということで注目していた。そもそも、高嶋監督は、前任の智弁学園では守備のチームを作っていたから、不思議なことではないのだけれど、実に興味深かった。しかし、2、3回戦で魅せた打棒は、とても、守備のチームではない。打のチームだった。試合の流れを少しずつ、モノにして言って、大事な場面で3年生を多用して、その精神力に賭ける。2回戦はそうして勝ち。3回戦は敗れたが、うねりのような打撃の勢いは智弁和歌山の本来の持つ強さに似たものがあった。
その時に思った。智弁和歌山、いや、高嶋監督の野球というのは守備のチームとか、打撃のチームというのは、選手のタレント性の話であって、彼の目指しているのは精神性の野球なんだと。だから、今回のように打が弱くても逆転できたし、そういう流れを作ることができた。高嶋野球の真髄をみた大会だったように思う。
他にもここに取り上げたいチームがいくつもあった。それが今大会の良さであったから。接戦が多く、最後まで分からない試合展開を見せてくれた出場全チーム。そして、決勝戦も接戦で終止符を打った。ここ数年でも、記憶に残る大会だったといえるだろう。
| 第91回大会 | 優勝 | 中京大中京 |
|---|---|---|
| 準優勝 | 日本文理 | |
| ベスト4 | 花巻東 、県岐阜商業 | |
| ベスト8 | 帝京、明豊、都城商、立正大湘南 |

- 氏原 英明
- 生年月日:1977年
- 出身地:ブラジルサンパウロで生まれる
- ■ 高校時代から記者志望で、新聞記者になるのが将来の夢だった。
- ■ アトランタ五輪後に、スポーツライターに方向転換。
- ■ 大学を卒業後、地元新聞社に所属。
- ■ その後スポーツ記者として、インターハイなど全国大会の取材も経験させてもらい、数々の署名記事を書く。
- ■ 03年に退社。フリー活動を開始。
『週間ベースボール』、『ベースボールクリニック』(ベースボールマガジン社)、『アマチュア野球』(日刊スポーツ出版社)『ホームラン』(廣済堂出版)、『Number』(文藝春秋)、『Sportiva』(集英社)、『高校野球ドットコム』『ベースボールファン』などに寄稿。フリーライターとしての地位を固める。
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- ■ ブログ:「心で書く!」(氏原英明オフィシャルブログ)
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